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2020年7月の記事一覧

Withコロナとともに持続可能な社会について考えよう!

生徒の皆さんへ⑪

令和2年7月27日

Withコロナとともに持続可能な社会について考えよう!

 

 従来のカレンダーでは、すでに生徒の皆さんは夏休みに入り、部活動や進路活動に集中して取り組んでいるはずでした。今年は、今日が期末考査3日目、31日の終業式まであと一週間。皆さんには、苦難の連続だった一学期をラストスパートで乗り切り、有終の美を飾ってほしいと願っています。

 さて、タイトルにある持続可能な社会とは、「地球環境や自然環境が適切に保全され、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、現在の世代の要求を満たすような開発が行われる社会」を意味します。

 地球規模で人やモノ、資本が移動するグローバル経済の下では、一国の経済危機が瞬時に他国に連鎖するのと同様に、気候変動、自然災害、感染症といった地球規模の課題もグローバルに連鎖して発生し、経済成長や、貧困・格差・保健等の社会問題にも波及し、深刻な影響を及ぼす時代になってきています。

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界中の人々の健康を脅かし、世界経済を大きく揺るがす中、企業にとってはいかにしてビジネスを続けるかという「持続可能性」が問われています。国連が2015年に掲げた持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」に対する関心が高まっているのは、気候変動に伴う異常気象や大災害などを含めて、様々なリスクが顕在化しているからです。

 年明け以降、新型コロナウイルスの感染が中国から急速に世界中へと広がりました。イベントの中止や外出自粛、飲食店の閉鎖といった動きが相次ぎ、旅行客の激減や生産活動の落ち込みなど、暮らしやビジネスに甚大な影響を及ぼしています。

 7か月前に中国で感染がわかった未知のウイルスが、わずか半年の間に世界全体に蔓延したのは、21世紀に入って加速したグローバル化との関係を抜きにして語れません。2000年に世界で7億人だった海外旅行者数は、2019年には15億人と、倍以上に増えました。企業活動では、2000年度に約1万5千社だった日系の海外現地法人数は、2016年度には約2万5千社に増え、世界各国を結ぶ部品供給網や製品・サービスのネットワークが、複雑化・高度化しています。

 世界がより深く、幅広く結びついたことで、人の往来やモノのやり取りが盛んになりましたが、同時に、ある国が何らかの理由で危機に陥れば、世界全体に様々な形で打撃を与えることを思い知らされました。今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、まさにその一例だと思います。思わぬリスクが顕在化し、持続可能性そのものが危うくなりかねない時代だからこそ、SDGsの考えを知っておく必要があると私は考えます。

 SDGsは、サステイナブル・ディベロップメント・ゴールズ(Sustainable Development Goals)の略で、「持続可能な開発目標」と訳されます。2030年までのグローバルな課題の解決に向け、世界の全ての人が協力しようという17の目標(ゴール)を指す言葉です。2015年9月の国連サミットで、加盟193か国の全会一致によって決まりました。 

 ポイントになるのは「環境」と「経済」、人権や暮らしといった「社会」の三つの分野の調和を図ることです。これ以前には、貧困や飢餓をなくすといった途上国向けのミレニアム開発目標(MDGs)がありましたが、SDGsでは「各国内や各国間の不平等を是正する」「イノベーションの推進を図る」など、先進国を含めた全ての国の人々の課題を網羅していることが注目されます。

 国連の予測では、世界の人口は2020年の78億人から2030年には85億人に、さらに2050年には97億人となることが見込まれます。特にアフリカなど途上国の人口増加は著しいそうです。先進国がこれまで行ってきたような大量生産・大量消費の行動パターンがさらに広がれば、食料不足や資源の枯渇、気候変動に伴う大規模災害の増加など、世界規模で様々な危機が起きる可能性が高いといわれています。

 こうした危機を回避するため、先進国を含めた全ての国の人々が知恵を絞り、地球規模での課題解決に取り組む必要があります。グローバル化とデジタル化に伴う格差拡大が社会問題になっていることも踏まえ、SDGsでは「誰一人取り残さない」という理念を掲げ、政府や企業、社員、顧客などの全てのステークホルダー(利害関係者)がそれぞれの役割を果たすべきだとしています。

 SDGsでは、目標14「海の豊かさを守ろう」において「海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」と掲げています。

 東京海洋大客員准教授でタレントのさかなクンは今年2月に行われた参院国際経済・外交に関する調査会に参考人として出席し、海洋プラスチックごみの問題の深刻さを語りました。ニュースになっていたので、知っている人もいると思います。さかなクンは、「持続可能な社会をしっかり考えていくために、やはり一人一人が本当の自然の美しさと、いま何が起こっているのか?一歩外に出てみると様々なことを体感して、ギョ感で、いや五感でしっかり学べると思います。」と訴えました。

 SDGsという言葉は、なかなか国民の間に浸透しません。世界経済フォーラムが2019年秋に発表したSDGs認知度の調査では、日本国内での認知度は49%で、対象となった28か国中で最も低く、世界平均(74%)を大きく下回りました。中国やインドでも9割近くが多少なりとも認知しており、日本では「SDGsという言葉を聞いたことがない」が半数を占めました。関東経済産業局が2018年秋に管内の中小企業を対象に行ったアンケート調査でも「SDGsについて全く知らない」との回答が84%を占めたそうです。

 SDGsは、幅広いテーマが網羅されているゆえに、複雑で分かりにくい部分があります。しかしながら、逆境の時代だからこそ、SDGsに込められた意味がより一層比重を増しています。次代を担う生徒の皆さんには、アイデアを磨き、付加価値を高め、持続性を高めていく取り組みを自らの意思をもって進めていくことが求められています。

 

参考

読売クオータリー2020春号「新型コロナ流行の今、SDGsの意義とは」

https://www.yomiuri.co.jp/feature/quarterly/20200422-OYT8T50011/