講話 ・ 式辞

生徒の皆さんへ(今こそ読書量を増やすチャンスです)

 小学生から高校生までの間に読書量が多かった人は、大人になった時に「物事に進んで取り組む意欲」(主体的行動力)や「一時的な記憶力」(認知機能)などが高い傾向にあることが、国立青少年教育振興機構の調査でわかりました。同機構の発表では、「小・中・高校と継続して読書をしている人は各種能力が高いことが示された」としています。

 スマートデバイスの個人所有率の上昇に伴い、読書の方法が多様化しています。本(紙媒体)を読まない人が増える一方で、スマートフォンやタブレットなどを使った読書も確実に増加しています。しかし、調査結果では、「紙媒体で読書している人の非認知能力が最も高い傾向にある」とのことでした。

 読書には、語彙力や読解力を発達させ、思考力や想像力を高めさせるという効用があるばかりでなく、根気強さを培うという効果もあります。本を読む際には、思考力や想像力を駆使しながら文章から具体的場面を想像力によって立ち上げたり、作者の言いたいことを論理的にたどったりするなど、かなりの知的努力を必要とします。それを継続するのは根気のいる作業です。

  さて、夏の楽しみの多くを奪われてしまった新型コロナウイルス変異種の出現。しかし「本を読む」楽しみは誰にも残されています。今日皆さんに紹介したいのは、新潮新書から出ている「マスクをするサル」という社会論の本です。タイトルを見た瞬間から、「タイムリーな本」だなぁと感じました。

 著者が霊長類・人類観察の中で培ってきた知識の上に、世界中の人々が顔に乗せ始めた「マスク」が広い意味の文化にどう影響するかを考察した本です。

 「マスク」がコロナ禍における我々の生活に持つ意味が大きいことは言うまでもありません。人前で話すときには「マスク」を外すべき、というのが私の個人的意見ですが、「感染を防ぐ目的のものを安易に外すべきでない」という意見も当然あります。また、「隠れたものは見たくなる」という著者の主張からすれば、確かに「あの人の口元を見てみたい」といった願望が生まれてくるかも知れません。

 しかし、何と言っても「人間は何故衣服を着るようになったのか」の記述は、“さすが霊長類の研究者”と感心しました。読んでいてとても面白い本だと感じました。「マスク」に対する新たな視点を持つことができた気がします。

 9月からの分散・時差登校により、自宅で過ごす時間がこれまでより確実に増えます。読書を通じて、語彙力や読解力のような認知能力を高めるだけでなく、根気強さや共感性といった「非認知能力」を養う機会を、生徒の皆さんにはぜひ増やして欲しいと思います。 

マスクをするサル(新潮新書) 2021年4月19日発行 正高 信男 (著)