アーティゾン美術館へ部員10名+顧問で行ってきました!

今年から始めた「アート散歩」。目的は学校を飛び出してさまざまな美術作品やアートの世界に触れ、視野を広げたり深めたりして、自分の作品制作の肥やしにすることです。

 

第一弾として、今回は東京・八重洲口から徒歩10分ほどのところにある、アーティゾン美術館に行ってきました。

こちらは美術部の部員からの推薦です。シンプルな外観のビルの中は自然光あふれるガラスとアートの世界。

とても素敵な美術館です。

 

 

そしてなんと、現在行われている「彼女たちのアボリジナルアート」展のキュレーターの一人である上田先生に、直接今回の美術展についてのお話を伺うチャンスが得られました。開館と同時に美術館にお邪魔し、部員たちはメモと鉛筆を握りしめ、いざ鑑賞スタートです。

 

部員たちの基本的な知識は、アボリジナルの人々とは、オーストラリアの先住民族である、ということくらい。

そもそもオーストラリアの現代美術とは何かについて、ほとんど知らない状態での今回の鑑賞でした。

しかし、鑑賞が進むにつれて、学芸員さんのお話を聞きながら部員たちの表情は真剣に、時に驚きを帯びていきます。

 

たとえばこちらのアート作品。古い木の椅子を、作りかけの83本もの木の矢が貫いています。

さらによく見ると、その矢の一つ一つに、名前が焼き入れられていることがわかります。

 

これはかつて、先住民の人たちが虐げられ、虐殺されたり混血を余儀なくされたりした時代のなか、親元から無理に連れ去られて非アボリジナルとして生きることを強制された子どもたちの、ほんの一部ですが、調査してわかった実際の名前なのだそうです。

恐ろしいことに、オーストラリアのタスマニア島というかつて先住民の人たちが多く住んでいた場所には、いまや純血の先住民の人は皆無だといいます。どれだけの悲しい殺戮や差別があったのかをこの事実が示しています。

 

 

展示室内には7人の女性アーティストと1つのグループの作品の数々が、2つのフロアにまたがって並んでおり、それぞれが独特で力強い存在感を放っています。 

 

これらの作品についての、いくつかの生徒の振り返りや考察、感想を抜粋します。

「版画を学んだ作家さんのよく似た絵を見ると、同じ場所を描いたものだった。でも、片方はもう片方よりもずっと色使いが毒々しかった。これは汚される前の場所と、そのあと汚染されてしまった様子を描いてるのだと思った。核兵器も関係しているのかもしれない」

 

「ユーカリの樹皮や、木や、シリカや、動物や砂漠の草や、身近なものを材料にしている作品が多かったです。特に、ユーカリの木を丸ごと作品にしている物の存在感がすごかった。もしああいう作品が今身近に立ってたら、周りの見え方がガラッと変わるだろうからすごい作品だと思います」

 

「どの作品も大きかったことが印象的でした。伝えたい想いの強さがそのまま作品の大きさになってるんだと思います。あと、アニメーションのトカゲが可愛すぎました!私たちのイメージするような、茶色とかの色じゃなくて、黄色とか明るい色で作られていて、動きもとても可愛かったです」

 

10人それぞれが注目する作品が異なっていることも興味深かったです。作品の大きさ、絵よりもアニメーションに注目する生徒、比較によってさらにその作品の深奥にせまる生徒、小動物の毛皮が使われた作品に見入る生徒、人々の失われた故郷に思いを馳せる生徒・・・

 

 作品は伝統的な図像をかたどったものから、作家から生み出された自由でポップな色彩のものまで幅広く、技法もさまざまでした。しかし共通するのはまさに故郷への思いと、アボリジナルの核にある、大地への思いでした。

それは作品に使用されている素材にも表れていて、ユーカリの樹皮や木、小動物の毛皮、砂漠に生える草、オーストラリアが生産量一位だというウラン硝子、石炭、伝統的な植物である葦・・・

 このようなものがアーティストの手で素晴らしい芸術品となって、会場に息づいていました。

 

ちなみに、顧問の私がもっとも印象に残ったのは、こちらの作品でした。

 

 二つの側面をもつこの作品のギャップに衝撃を受けました。その変貌は、鑑賞者である私たちに鋭く問いかけます。

はじめ、きれいな作品だなあとただ眺めていただけの自分にとって、この作品が投げかけていた本来のメッセージは、皮肉なほど辛辣なものでした。

 

ぜひ現地でみなさんにも見ていただきたいと思います。

 

最期に、生徒の考察をもう少し載せたいと思います。

 

「伝統的な作品から知識・技術を用いた作品、自分が想うものを自由に描く作品と同じ国でもまた違ったアート・芸術を鑑賞することができて本当に良かったです」

「植民地支配を受けても、『私たちを支配することはできない』ってどの作品も言ってる気がしました。そして、このような作品が最近まで世に伝わらなかったというのが悲しかったです」

「失われた伝統を再び発展させていこうとする力強さ、虐げられてきた苦しさ、故郷への強い思い、などのエネルギーを感じました。彼女たちは自らの体験や技術を活かして作品を作っているのでエネルギーを感じるのだと思います」

 

 

非常に多くの衝撃と学びを与えてくれたこちらの展示「彼女たちのアボリジナルアート」展。

東京駅の八重洲口からすぐのアーティゾン美術館にて、9月21日まで開催しています。

本校の生徒たちにとっても、貴重な忘れられない鑑賞体験となりました。ぜひお立ち寄りください。