講話 ・ 式辞

カテゴリ:校長日記

震災から10年 今私たちにできること

生徒の皆さんへ

令和3年3月1日

 

震災から10年 今私たちにできること

 

 令和3年度入試のため臨時休業中の生徒の皆さん、どのようにお過ごしでしょうか?

 これまで新型コロナウイルスの感染拡大防止にご協力いただき、本校では感染拡大により痛手を被ることなどなく教育活動を進めることができました。1・2年次生の学年末考査が終わり、3年次生の登校も卒業式の予行と本番を残すのみとなりました。この場をお借りして、あらためて感謝の気持ちをお伝えします。

 さて、2011年3月11日に起きた「東日本大震災」から10年がたとうとしています。関連死を含め2万2千人以上が犠牲になった被災地では、土地の造成や住宅建設などハード面の整備がほぼ完了しました。しかしながら、コミュニティーの再生や被災者の心のケアなど、課題は今なお山積しています。特に、東京電力福島第1原発事故で放射能に汚染された福島県では、住民の帰還が思うように進んでいません。約3万7千人がいまだに避難生活を続けています。そうした被災地への人々の関心は、かつてと比べ薄れてきているように感じられます。しかも、昨年からは新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、他の問題は陰に隠れがちです。本校でも、震災直後から9年間続けてきたボランティア活動を、今年は止む無く中断しています。このまま震災の記憶の風化が加速してしまうのではないか?そんな危機感を個人的に持っています。

 内閣府の「社会意識に関する世論調査」によると、震災後には「何か社会のために役立ちたい」と思っていた人の割合が上昇したそうです。とりわけ20代は、前年から10ポイント以上増えて70%に達しました。しかし、その後は全体的に減少傾向に転じ、昨年には20代も震災前の水準に戻ってしまいました。背景には、この10年間で格差社会が広がり、他人を思いやる余裕がなくなってしまったという深刻な状況があります。コロナ禍の今、私たちが直面している新たな問題に通じるものがあると感じます。感染者や医療従事者に対する差別や偏見がなくならないのも、日本社会が劣化している現れといえるのかもしれません。

 そうした中でも、被災地の多くのまちでは、震災の記憶を伝える活動を続けている人たちがいます。被災地の課題は、人口減少が進む日本の他の地域に共通するものでもあります。ともに知恵を巡らすことは、被災地への支援になるだけでなく、自分自身の問題解決にも結びつくはずです。我々はこの10年間を客観的に振り返るとともに、被災地の今に目を向け、新たなつながりを育むきっかけづくりをしていかなければなりません。

 そこで皆さんに情報提供です。

 日本科学未来館(東京都・お台場)では、3月6日(土)から28日(日)まで、特別企画「震災と未来」展 ~東日本大震災10年~ を開催します。また、震災を忘れず教訓を未来へ伝えるため、「震災の記憶」、「その後の人々が生んだ絆」、「未来への課題」の3つをテーマに掲げ、NHKが記録・蓄積してきた映像や資料をさまざまなプレゼンテーションで振り返るほか、震災・復興にまつわるストーリーをもった品々の展示を通じて復興への取組と課題、また今後の災害に対する備えなどを紹介します。

 本年度被災地に赴くことができなかった生徒の皆さんには、是非とも学びを拡げ、深める機会にしてほしいと思います。

 

展覧会公式サイト:https://www.nhk.or.jp/event/art2020/

令和2年度「体育祭」の中止について

校長講話(LHR時放送による)

令和2年9月7日(月)6限

 

令和2年度「体育祭」の中止について

 

 9月に入ってから厳しい残暑が続いています。皆さん、体調はいかがでしょうか?

 生徒と教職員、及び皆さんのご家族の協力により、本校では、これまで新型コロナウイルス感染者の発生はなく、6月に学校を再開した際の計画に従って、教育活動が順調に進められています。この場をお借りして、あらためて皆さんにお礼を申し上げます。

 学校が本格的に再開した6月から8月末までの間に、全国の学校で1,166人の児童生徒に感染者が出たことが報じられました。このうち症状があった人は48%(557人)で、重症者はいないそうです。感染経路については、家庭内の感染が56%(655人)でした。また、校内感染は15%(180人)と増加傾向にあり、県内では、先週も東部の高校で部活動でのクラスターが発生しており、予断を許さない状況が続いています。

 このような状況を鑑み、先週月曜日に臨時職員会議を開き、10月8日(木)に予定されている体育祭の開催について検討をしました。

 文化祭や体育祭などの学校行事は、他者と協働しながら、課題解決や合意形成、人間関係づくりなどを学ぶことができる重要な場です。他者と協働するなかでの学びは、オンラインでもその一部は実施できると思いますが、同じ空間に集まって、対話を通じて、また、ときには対立、衝突するなかで、育まれる部分が大きいと思います。

 学校再開時に文化祭の中止を決定した際には、学校や先生方の知恵の見せどころとして体育祭だけは何としても実施したいとの意思を皆さんにお示ししました。感染防止と行事を通じた学びの充実が両立できる道を探り、感染状況を見つつ、外部からの参観などを全てお断りした上で開催することを前提に、体育祭の準備を進めてきました。

 8月に各部活動が参加した大会の様子も視察しました。我々の手で体育祭が安全に実施できるのか、体育科の先生方にもお知恵をいただきながら慎重に検討を重ねました。

 その結果、現状では密閉・密集・密接の3つの密全てを回避することができないと判断し、今年の体育祭を中止とします。選手の招集や競技中、応援等の場面において、密集・密接がどうしても避けられないと判断しました。

 3年次生にとっては、高校生活最後の体育祭であることを考えますと、つらい決断ではありますが、生徒や教職員の健康と安全が第一と考えた結果です。

 学校全体での行事は中止としますが、これに代わる学年行事を、時期をずらして実施するよう学年単位で検討することとしました。授業の一環としての体育的な行事ではなく、生徒の皆さんの主体性やアイデアが発揮される行事になるよう、校長として、あらためてお願いをさせていただきます。

 学校によってやり方は様々ですが、Withコロナをどのよう学校生活の中で実現させていくか、「川総」が輝きを失うことなく素晴らしい学校であり続けますよう、皆さんの英知と行動力に期待をしています。どうかご理解とご協力をお願いします。

 

川越総合高等学校

校長 服部 修

戦後75年と「人間の安全保障」について

生徒の皆さんへ⑫

令和2年8月15日

 

戦後75年と「人間の安全保障」について

 

 1学期の終業式から2週間近く経過し、生徒の皆さんの中には部活動の大会や進路活動に汗をかいている人が多いと思います。暑さに負けず充実した毎日を過ごしているのではないでしょうか?

 8月4日(火)に行われた成績会議では成績優良者が100人を超え、一学期としては過去最高の人数でした。また、欠点保持者は27人と前年と比べて大幅に減りました。これまで誰も経験していないコロナ禍の中、緊張感をもって学校生活を送っていた皆さんの頑張りが、数字となって現れました。あらためて、生徒の皆さんに感謝の気持ちをお伝えします。

 今年は終戦75年の節目にあたります。75年前の昭和20年(1945年) 8月15日の正午、昭和天皇はラジオを通じて第2次世界大戦が終わったことを国民に伝えました。このことから、毎年8月15日の正午になると黙とうをし、第2次世界大戦で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、戦争を二度と起こさないことを誓います。夏の全国高等学校野球選手権大会では、毎年、甲子園球場で選手・観客らが1分間の黙とうを捧げて平和を誓います。

 戦禍を生き延びた人々は高齢化し、当時のことを知る人は減ってきています。健康への不安、薄れる記憶。私は終戦後20年近くたってから生まれた世代なので、戦争を体験していません。しかし、私が子供の頃、父からよく戦争の話を聞きました。空襲で空から焼夷弾という爆弾が雨のように落ちてきて必死で逃げたこと、学徒勤労動員により軍事工場で作業していた時にB29による爆撃を受け、大きな傷を負い生死をさまよったことなどを聞かされました。戦争はいけないことだ、平和が大事だと多くの人は言います。しかし、戦争中、または停戦中でありながらいつまた戦争が再開してもおかしくない国や地域が世界中にたくさんあります。戦争は決して過去のことではないのです。私たちは、絶後の体験をした人たちの思いを、しっかりと受け継いでいるのでしょうか?

 平和への思いを若い世代へ託そうと発信を続けている人もたくさんいます。まだ間に合います。人類が同じ苦しみを二度と繰り返さないためにも、戦争を知る人たちからのバトンを受け取り、我々自身が戦争と平和について正面から向き合い、考えていかなければならないのです。

 みなさんは「人間の安全保障(英語: Human Security)」という言葉を耳にしたことがありますか?

 人間の安全保障とは、人間一人ひとりに着目し、生存・生活・尊厳に対する広範かつ深刻な脅威から人々を守り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現するために、保護と能力強化を通じて持続可能な個人の自立と社会づくりを促す考え方です。1994年に国連開発計画(UNDP)「人間開発報告書」で提示されてから26年目を迎え、今、あらためて注目されています。この考え方は、「誰も取り残さない」「最後の人を最初に」とするSDGsの考え方と共通する要素を多く含んでいます。この概念は、ノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・セン博士の「開発理論」に由来すると言われています。

 21世紀を生きる皆さんとともに、川越総合高校のこの先の100年を見据え、課題研究などの探求学習の機会にじっくり考えていきたいテーマです。

 

Withコロナとともに持続可能な社会について考えよう!

生徒の皆さんへ⑪

令和2年7月27日

Withコロナとともに持続可能な社会について考えよう!

 

 従来のカレンダーでは、すでに生徒の皆さんは夏休みに入り、部活動や進路活動に集中して取り組んでいるはずでした。今年は、今日が期末考査3日目、31日の終業式まであと一週間。皆さんには、苦難の連続だった一学期をラストスパートで乗り切り、有終の美を飾ってほしいと願っています。

 さて、タイトルにある持続可能な社会とは、「地球環境や自然環境が適切に保全され、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、現在の世代の要求を満たすような開発が行われる社会」を意味します。

 地球規模で人やモノ、資本が移動するグローバル経済の下では、一国の経済危機が瞬時に他国に連鎖するのと同様に、気候変動、自然災害、感染症といった地球規模の課題もグローバルに連鎖して発生し、経済成長や、貧困・格差・保健等の社会問題にも波及し、深刻な影響を及ぼす時代になってきています。

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界中の人々の健康を脅かし、世界経済を大きく揺るがす中、企業にとってはいかにしてビジネスを続けるかという「持続可能性」が問われています。国連が2015年に掲げた持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」に対する関心が高まっているのは、気候変動に伴う異常気象や大災害などを含めて、様々なリスクが顕在化しているからです。

 年明け以降、新型コロナウイルスの感染が中国から急速に世界中へと広がりました。イベントの中止や外出自粛、飲食店の閉鎖といった動きが相次ぎ、旅行客の激減や生産活動の落ち込みなど、暮らしやビジネスに甚大な影響を及ぼしています。

 7か月前に中国で感染がわかった未知のウイルスが、わずか半年の間に世界全体に蔓延したのは、21世紀に入って加速したグローバル化との関係を抜きにして語れません。2000年に世界で7億人だった海外旅行者数は、2019年には15億人と、倍以上に増えました。企業活動では、2000年度に約1万5千社だった日系の海外現地法人数は、2016年度には約2万5千社に増え、世界各国を結ぶ部品供給網や製品・サービスのネットワークが、複雑化・高度化しています。

 世界がより深く、幅広く結びついたことで、人の往来やモノのやり取りが盛んになりましたが、同時に、ある国が何らかの理由で危機に陥れば、世界全体に様々な形で打撃を与えることを思い知らされました。今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、まさにその一例だと思います。思わぬリスクが顕在化し、持続可能性そのものが危うくなりかねない時代だからこそ、SDGsの考えを知っておく必要があると私は考えます。

 SDGsは、サステイナブル・ディベロップメント・ゴールズ(Sustainable Development Goals)の略で、「持続可能な開発目標」と訳されます。2030年までのグローバルな課題の解決に向け、世界の全ての人が協力しようという17の目標(ゴール)を指す言葉です。2015年9月の国連サミットで、加盟193か国の全会一致によって決まりました。 

 ポイントになるのは「環境」と「経済」、人権や暮らしといった「社会」の三つの分野の調和を図ることです。これ以前には、貧困や飢餓をなくすといった途上国向けのミレニアム開発目標(MDGs)がありましたが、SDGsでは「各国内や各国間の不平等を是正する」「イノベーションの推進を図る」など、先進国を含めた全ての国の人々の課題を網羅していることが注目されます。

 国連の予測では、世界の人口は2020年の78億人から2030年には85億人に、さらに2050年には97億人となることが見込まれます。特にアフリカなど途上国の人口増加は著しいそうです。先進国がこれまで行ってきたような大量生産・大量消費の行動パターンがさらに広がれば、食料不足や資源の枯渇、気候変動に伴う大規模災害の増加など、世界規模で様々な危機が起きる可能性が高いといわれています。

 こうした危機を回避するため、先進国を含めた全ての国の人々が知恵を絞り、地球規模での課題解決に取り組む必要があります。グローバル化とデジタル化に伴う格差拡大が社会問題になっていることも踏まえ、SDGsでは「誰一人取り残さない」という理念を掲げ、政府や企業、社員、顧客などの全てのステークホルダー(利害関係者)がそれぞれの役割を果たすべきだとしています。

 SDGsでは、目標14「海の豊かさを守ろう」において「海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」と掲げています。

 東京海洋大客員准教授でタレントのさかなクンは今年2月に行われた参院国際経済・外交に関する調査会に参考人として出席し、海洋プラスチックごみの問題の深刻さを語りました。ニュースになっていたので、知っている人もいると思います。さかなクンは、「持続可能な社会をしっかり考えていくために、やはり一人一人が本当の自然の美しさと、いま何が起こっているのか?一歩外に出てみると様々なことを体感して、ギョ感で、いや五感でしっかり学べると思います。」と訴えました。

 SDGsという言葉は、なかなか国民の間に浸透しません。世界経済フォーラムが2019年秋に発表したSDGs認知度の調査では、日本国内での認知度は49%で、対象となった28か国中で最も低く、世界平均(74%)を大きく下回りました。中国やインドでも9割近くが多少なりとも認知しており、日本では「SDGsという言葉を聞いたことがない」が半数を占めました。関東経済産業局が2018年秋に管内の中小企業を対象に行ったアンケート調査でも「SDGsについて全く知らない」との回答が84%を占めたそうです。

 SDGsは、幅広いテーマが網羅されているゆえに、複雑で分かりにくい部分があります。しかしながら、逆境の時代だからこそ、SDGsに込められた意味がより一層比重を増しています。次代を担う生徒の皆さんには、アイデアを磨き、付加価値を高め、持続性を高めていく取り組みを自らの意思をもって進めていくことが求められています。

 

参考

読売クオータリー2020春号「新型コロナ流行の今、SDGsの意義とは」

https://www.yomiuri.co.jp/feature/quarterly/20200422-OYT8T50011/

朋(とも)有(あ)り遠方(えんぽう)より来(きた)る

生徒の皆さんへ⑩

令和2年6月23日 

朋(とも)有(あ)り遠方(えんぽう)より来(きた)る 

 

埼玉県立川越総合高等学校

校長 服部 修

 

 通常登校が始まり二日目の朝を迎えました。3週間続いた分散・時差登校に引き続いて生徒の皆さんが休まず登校する姿を見て、大変嬉しく思っています。

 「朋有り遠方より来る、また楽しからずや」、4月に新たな仲間263名(生徒245名・教職員18名)を迎えて間もなく3か月になります。一年次生の皆さんは、想定外のスタートだったため、不慣れな中、今も緊張の毎日を過ごしているのではないかと推察します。本校の校訓である「心理と正義を愛し、勤労と責任を重んじる」の精神で、堅実に、一歩ずつ、学校生活に馴染んでいって欲しいとを願っています。

 目指す生徒像の「広い視野を持ち、夢の実現に向けて学び続ける生徒」を育てるため、先生方は生徒の皆さんの自主性を大切にするよう日頃から心掛けています。しかしながら、コロナ禍の中、決して放任にならないよう、まずは生徒諸君一人ひとりが自らを律して行動するようにしてください。また、同級生同士は勿論のこと、生徒会活動、部活動などを通して、年次を超えて交流の輪を広げるようにしてください。学校教育は、生徒たちが一生を生きていく上で役に立つ知識や技術を教えることが目的ですが、それとともに、社会の常識や人間関係の形成の仕方、つまり社会性、また、人としての在り方や生き方、つまり人格を形成することを助けることも、重要な役割です。特に一年次生は、再開した部活動で汗を流す先輩たちの姿を見て、心に期すものがあると思います。自分の個性と持ち味が発揮できる部活動を自身の目で見つけ出してください。上級生諸君はリーダーシップを発揮して、一年次生のよき相談相手になってもらえるようお願いします。

 梅雨入りしてから、ジメジメした天気が続いています。新型コロナウイルス感染症対策とともに、熱中症にも注意が必要です。朝夕決まった時間の体温計測、健康チェックは熱中症予防にも有効です。平熱を知っておくことで発熱に早く気づくこともできます。日頃から自分の身体を知り、健康管理を充実させ、体調が悪いと感じたら無理せず自宅で静養してください。

 

タイトルの出典 論語(ろんご)・学而(がくじ)

 意味 遠くにいる同じ目標を持った友達が、わざわざ訪ねて来てくれた喜びと、その友と語らえる喜びをいったことば。

 参考 URL  https://kotowaza.avaloky.com/pv_fre06_01.html