講話 ・ 式辞

儀式等で お話しした内容を掲載いたします。

感染症の歴史に学ぼう

生徒の皆さんへ⑧

令和2年5月27日

 

感染症の歴史に学ぼう

 

埼玉県立川越総合高等学校

校長 服部 修

 

 新型コロナウイルスが私たちの暮らしを大きく揺るがしています。過去をふり返ると、人類はたびたび感染症に襲われ、多くの命が失われてきました。一方で、感染症の流行は人々の考え方や行動様式を大きく変えるきっかけになってきました。時には、世の中の大変革や進歩、社会インフラの改善につながることもありました。終息まで時間がかかると言われています。今日は過去の感染症に学び、「コロナ後(アフターコロナ、ポストコロナ)」について考えてみましょう。

 コレラは元々インドの風土病でしたが、植民地支配をしていた大英帝国の覇権拡大により世界中に広がり、各地で度々大流行しました。日本でも、明治維新前の開国前後に流行し、江戸だけで26万人が死亡したとの記録が残っています。汚れた飲み水に起因して流行したため、公衆衛生の重要性が認識され、上下水道の整備が進みました。このため、コレラは「衛生の母」とも呼ばれています。

 天然痘は人類が唯一根絶に成功した感染症です。1万年くらい前に人類の病気として定着したと考えられています。中米のアステカ帝国やインカ帝国が滅んだのは、攻撃を仕掛けたスペイン軍の武力よりも軍人が持ち込んだ天然痘のせいだったといわれます。日本では奈良時代に大流行し、当時政権を担っていた藤原四兄弟が死亡しました。戦国武将の伊達政宗が片目を失った原因も、幼少期に患った天然痘だったといわれています。明治時代にも、数万単位で人が亡くなる大流行が3回ありました。ちなみに、東大医学部は江戸時代の予防接種施設が起源です。20世紀中の死者は3億人にのぼりましたが、ワクチンを使った世界保健機関(WHO)の活動が功を奏し、1980年に根絶を宣言しました。

 新型コロナウイルス感染症が世界中で急速に広まったのは、グローバル化が進み、国境を超えた行き来が盛んになったことも大きな要因です。感染症の流行、拡大には、それぞれの時代背景が大きく影響していることがわかります。

 いずれ新型コロナの感染拡大が終息したとしても、これまでの社会と大きく変わる面が必ず出てきます。緊急事態宣言で一気に広まったのが、自宅で働くテレワーク(リモートワーク)と、学校のオンライン授業です。もちろん、会社や学校で顔を合わせて働いたり、学んだりすることの大切さは変わりませんが、働き方も学び方も、「コロナ以前」に戻ることはないと思います。通勤や通学の負担が減り、自宅で過ごす時間が増え、生活にゆとりが生まれるかもしれません。

 急激に収益が落ち込んでいる外食、宿泊、旅行、エンターテインメント、アパレル、化粧品といった業界は、コロナ後にどんな工夫をしたら生き残れるでしょうか?いま急激に伸びている通信、ネット通販、宅配・物流といった業態は、さらにどう発展していくのでしょうか?東京を中心とする首都圏への人口集中が続いてきましたが、「密」の回避やテレワークの普及で、地方への人口分散が始まる可能性があります。そして、新たなビジネスがいくつも生まれることでしょう。こうしたことを考えてみることが、皆さんの将来につながるはずです。 

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